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さて、一応急展開です。で、ココで一章は終了です。文章上結構中途半端ですけどね。
「龍、てめぇ、俺の顔に泥塗ってきたらしいなぁ……あぁ?」
刑事部捜査一課超常現象対策室。大きさからいったら中途いった感じの会議室。そんな様子の室内。
節電か、はたまたその部屋の主の意向か、妙に薄暗いその部屋の最奥部。
置かれた机に両肘を付き、組んだ手のせいで顔が更にハッキリしない。
静戒が開けた扉か差し込む光の逆光で静戒には余計に顔は判断できなかった。
しかしながら、その声は静戒が最も恐れている相手。
警察という組織自体が完全なる縦社会のために、時に上司は部下に嫌われるを通り越し恐れられる。
それは仕方のないことだが、静戒はこの人物を心底から恐れていた。理由は幾つかあるがその最たるは戦って勝ち目のない相手。
霊的な戦闘。
単純な武力。
威圧する眼力。
挙げていては切りがないが、戦闘に関する全てで静戒の力はその人物に遙か遠かった。
決して静戒が弱いというわけではない。
警視庁主催の剣道大会で三度の優勝。
元々いた道場でも師範格・免許皆伝をえている。
柔道三段。空手初段。合気道初段。
そんな静戒が恐れる相手――彼の名前は斉藤 仁(さいとう じん)。
超常現象対策室室長・警視正。
静戒と違い段や大会優勝などの肩書きこそないものの、訓練での庁内模擬で不敗を維持している。
また、射撃の腕は超人並みで、拳銃は勿論、マシンガン、ライフル、ボウガン、果てはダーツまで。
的を見ずにも確実に仕留める。
斉藤の腕にかかれば相手が動いていようが止まっていようが関係はなかった。
一度銃口を向けられ定められた的は確実に打ち抜かれていた。かつて強行犯係にいたときに幾度も命令違反の射殺をして問題にもなっている。
それが為に元々は警察庁からの出向で警視庁に来たのだが、戻れずにいるのだが、本人は至って気にしてはいない様子だ。
そればかりか、幾つかの手を裏から回して、捜査一課に新部署まで立ち上げた。
そう、斉藤こそ超常現象対策室の生みの親である。
「俺の顔に泥塗ってきたらしいなぁ、聞いてンのか?」
口調は決してよくはない。同じセリフを吐くと「閉めろ」と付け足し静戒にそばまで来るように促した。
扉を静かに閉めるとコツコツと言う靴音もできるだけ忍ばせながら静戒は斉藤の横に立った。
「で、どうなんだ?」
「………」
斉藤の質問に静戒は答えない。
「紅永会、神取はどう絡んできてやがんだ?」
「………」
「龍、聞いてンのか!」
声を荒げる斉藤に一瞬ビクッっと体を震わせる。
「まぁいいさ。どうせ向こうだってデカが来てることくらいは判っちゃいるだろうからな。俺が気にいらねぇのはてめぇが尾けられたことだけだ。所轄の莫迦から下らねぇ苦情が上がってきてるぜ。ったく、刑事が尾行に気付かねぇとはな、ってよ」
「………」
「しかも、てめぇはソレを所轄が掴んだ後に持ってったらしいなぁ。何処までも使えねぇ」
「………」
「それで、龍。面白いことにはなったのか?」
「は、はい……」
「なら、いいさ。取り敢えずだ、所轄の莫迦共より先に輪っぱ掛けてこい。てめぇ屁の仕置きはヤマが済んでからだ」
「わかり、ました」
「分かったらとっとと行けよ。それとも、死ぬか?」
言うと引き出しを開け、拳銃を取り出す斉藤。
ソレをゆっくりと掴むと銃口を静戒に方に向けサイト越しに静戒を見る。
「!」
途端、銃口から火が噴き、静戒の額を貫通して、入って来た扉にめり込んだ。
瞬間額から煙を上げながら静戒の体は煙場になり、やがて消失した。
「ケッ!下らねぇ……」
呟くと斉藤は銃をしまい立ち上がった。
「危ねぇ危ねぇ……危うく死ぬとこだったぜ」
警視庁内のラウンジでコーヒーカップを覗きながら静戒はうっすらとかいていた冷や汗を袖で拭った。
「斉藤さんは冗談じゃなく撃つからなぁ」
『なら、撃たれる前に片を付けてきやがれ。次は影じゃ済まさねぇぞ』
静戒の言葉に反応し、コーヒーカップからそう斉藤の声がしたのを聞いて静戒は額を摩った。
「解ってますよ。二度の失敗が許されないくらいは」
ったく、いくら式神だって解ってるからって撃つなよな。
毒づきながら静戒はコーヒーを飲み干し、カップを返却口に返すとラウンジを出て警視庁も後にした。
向かうのは紅永会。
十五階建てのビルの正面入り口。その中の一階エントランスで警察手帳を見せ、社長の不在を確認しながらも気にせずに上階へのエレベーターに乗り込み、最上階まで来た。
「済みません、アポを取っていただかないと」
そう言いながら後ずさりをして静戒を押しとどめようとする何人かのスーツ姿の男。
「るせぇなぁ、居ねぇ訳ねぇだろうが」
歩みを緩めることなく奥の社長室にゆっくりと近づく。
「城島(きじま)、居るんだろ?邪魔するぜ」
扉を蹴破るように開け放つと室内に入り込む。
「オヤオヤ、どなたでしたか?私の記憶にはないのですが」
中でゴルフクラブをてにスィングの練習をしながら頭だけを向けていう初老の男。
「やっぱいるじゃねぇかよ、久しいなぁ、城島。出世したじゃねぇか」
「………あぁ、静戒さん、でしたっけ?昔は内の無鉄砲者がお世話になりましたねぇ」
「俺のことを覚えてるってことは何しに来たかも解ってるな?それと、てめぇだってその無鉄砲者だったじゃねぇかよ。先代がくたばっちまったからって後釜に納まるとはな」
「ええ、前会長が暴漢に襲われたときは本当に驚きましたよ」
寝言はいいんだよ。そう言いながらソファに腰掛けタバコに火をつける静戒。
その姿に渋々といった感じで向かいに座って飲み物を注文する城島。
「人払い、した方がいいんじゃねぇか?」
「いえいえ、お気遣いなく。聞かれて困る話は何もありませんので」
「そうかい、ならいいけどな」
「それで、今日は何をお調べで?」
「あくまでシラ切るってんならまぁいいわ……弁護士の遠藤、殺ったのはてめぇだな?」
さぁ、次章をお楽しみに。 PR |
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