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さて、Pixivにも投稿しましたが、静戒龍の続編です。
いやぁ、我ながらいいペースで書いてるんじゃないかなぁ。 「捜査資料を見せてもらいにね」 「好きにすればいいと、俺も言ったな」 「ええ。ですから、勝手に見せてもらいに来ましたよ」 言うと、静戒は手近な机にあったファイルとホッチキスで留められた冊子を手に取った。 本城の手にある物と御同じセットだ。 「一応だけ聞くが、説明は必要か?」 「いえ、結構。コレでも刑事ですから。資料の見方くらいは分かりますよ」 言いながらページをめくる。 「見終わったら声をかけてくれ。俺は鑑識にいる」 「はいはい」 部屋を出て行く本城を見送る。 「………」 目を走らせながらページをめくる。その速さはただただページをめくってくるとしか思えないほど速い。 「………」 十数ページ読み進めたところでページをめくっていた右手が止まった。その手は口を覆うように顎に当てられる。 なんだコレは……? 静戒の視線の先にあるのは現場写真。その中でも遺体写真のページだ。 「水晶……?」 先ほどの現場で静戒が気にしていた右手。 そこには綺麗に球体にカットされた水晶が握られていた。 いや、正確には握られていただろうと言うべきか。右手は半開きになり、その中からこぼれ落ちる形ですぐ横に水晶がある。そう言う写真だ。 現場保存は初歩の初歩。誰かが手から放させたとは考えにくい。仮に犯人ならば、そこまでして置いておいていくはずがない。 「コレは、実物を見ねぇわけにはいかねぇな」 資料を閉じると、静戒は薄笑いを浮かべて捜査本部を出た。向かうのは鑑識課。 静戒の目に映ったのは、水晶だけではなかった。 彼の眼にはその水晶にうっすらと赤い光が入り込んでいるのが確認できた。 写真に写り混んだり、ましてや水晶に反射した光ではない。水晶の中身が光って見えたのだ。 もっとも、中にそう言った加工をすればそう言う物ができあがるが、それはその資料を幾度も見たであろう捜査員達の目には映っていなかったであろう。 つまり、一部の物だけが読み取れる……心霊写真の一種。そう考えてもらえれば分かるだろう。 写真に仮に人の顔が映り混んだとして、それが何らかの霊症である場合、普通の人のは顔しか捉えることができないが、専門の人間が見れば、それ以外にも見える物がある。 オカルト番組などで単なる顔だけの心霊写真から恨みの念だの守護霊だのと見分けられるのは見る人が見ればソレだけが映っているわけではないと分かるからだ。 それはつまり、一見何もない写真であっても、実は心霊写真の類と言うこともあり得ると言うことだ。 今回の写真がそうだったのであろう。 そして、静戒はその水晶の現物に何らかの力を感じた。 遠藤氏を殺した犯人の痕跡を。 「本城さん、資料ありがとうございます」 鑑識課の保管庫に入ると、静戒は本城を探して声をかけた。 「おや、もういいのか?てっきり時間がかかると思ったのだがな」 「いえいえ、必要な物は見せていただきましたので。で、今度は各証拠品の実物を見たくてこちらに来たんですけどね」 「なるほど。此処は他の事件の物もある。今回のヤマのは今そっちのテーブルに出してある分だ。俺も今見ていてな。一通り確認し終えたところだ」 「そうですか……」 言って静戒は広げられた証拠物を端から見ていった。 二つ目の机に取りかかった矢先、ソレはさらなる輝きを帯びて静戒の瞳に映った。 「本城さん、コイツ、借りてってもいいですかねぇ?」 机の上に置かれビニール袋に入った野球のボールほどの大きさの水晶玉を指さし聞いた。 「証拠物の持ち出しは禁止されている。本店ではそんなことも教えられないのか?」 小馬鹿にした口調で言う。 「まさか。でも、許可があればいいでしょ?刑事部長に今から許可を取ります。だから、あなたにも一応承認して欲しいンですけどねぇ……」 刑事部長という言葉の時に一瞬本城のこめかみが動いた。 「好きにしろ。だが、そんな水晶玉、どうするつもりだ?」 「どうって、コレが凶器なんですよ」 持ち上げると、ソレを差し出すような形をして静戒は言った。 「訳の分からないことは言わないでもらおうか」 「何が変わらないと?」 「遠藤は首を、頸動脈を一太刀で斬られている。凶器はまだ見つかっていないが、相当な切れ味を持った刃物だ。科捜研や監察医の話では間違いなく鋭利な刃物だと聞いている」 「それで?」 「………ソレは鈍器にはなるだろうが、切り傷を作れるわけがない。仮に割られていた物ならば話は別だが」 苛立った口調で本条は言う。 「そうは言ってもねぇ、コイツが一番死のにおいが強い。それに禍々しい紅い気で満ちている。間違いなく人を殺めた後の霊症だ」 「レイショウ?」 「あんたには詳しく説明してやる義理はねぇ。もっとも、説明したところで納得できるとも思えねぇがな」 「ソレが、オカルト好きの占い師の見解か?」 「占い師ねぇ……」 警視庁内外で超常現象対策室のコトをそう言っているのは知っている、現に捜査一課の中でもさんざんそう小馬鹿にされている。 決して気分のいい物ではない。 しかしながら、自分にない力を持った物を恐れ忌み嫌い侮蔑するのはいつの世でも在ること。 ソレが時には魔法であり、時には科学であり、そして霊力である。 魔女裁判なんかが一番いい例だ。 「ま、あんたがどう思ってもいいさ。トニカク、コイツは凶器なんだ。借りてきますよ」 言うと、水晶をポケットに突っ込み、新宿西署を後にした。 その後ろ姿を苦虫を噛み潰したような顔で本条が見ていたのは言うまでもない。 取り敢えず、此処まで。 あ、ちなみに、近々一章は終わります。 PR |
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さぁ、お待たせしました! 「おーい、誰かいないのかぁ?」 静戒は現場の部屋入り口の警官に手帳を見せ室内に入りながら言った。 「何だ、騒々しい……」 本当に迷惑そうに現場の奥から出てきたのは大村と同じくらいの歳の男だった。 くたびれたスーツのシワに、白髪交じりの髪が多少年を上に演出しているように見える。 「あんたがこの件の所轄責任者か?」 「だったら何だ?」 「本庁捜一だ」 「本店だぁ?捜査本部長も管理補佐官も何も言ってなかったぜ。このヤマはウチで片付けろって殆ど何もせずに帰っちまったがな」 「なるほどな……」 どういうコトだ?捜査本部の本庁の人間は捜査に殆ど関わらない。しかし、刑事部長は早期解決を……。一瞬静戒はそう思ったが、一先ず頷くと本題に入った。 「今更本店が何の用だ?」 「ああ、すまねぇな。ちょっと捜査資料と現場を見せてもらいたくてな」 「現場はさておき、資料は本店にもあるだろうが」 この刑事はよほど静戒を――と、言うよりは本庁を――毛嫌いしているのか、ひたすらに煙たがっている。 もっとも、先の静戒の言ったとおり、所轄と本庁の確執は警視庁管内にかかわらず何処の都道府県でもよくある話だ。 「まぁ、そう言うなよ。俺だって別に好きこのんでこんな所まで来た訳じゃねぇんだからよぉ。本庁でも爪弾きにしれちまってな、仕方なく一から自分でやってんだよ」 「お前の都合など知るか………まぁ、捜査資料ならウチの署の本部にある。勝手に見ろよ」 「あぁ、そうするここを見終わったらな」 「好きにしろ。俺はもう戻る」 「分かった………っと、あんた名前は?」 「人に聞くならテメェから名乗りな」 お互い口が悪い。しかし、静戒は男の言葉に気を悪くした様子もなく、悪かったな。と、言うと名刺を差し出した。 「静戒だ」 「名刺?」 「魔除けになるぜ、持ってな。で、あんたは?」 「本城(ほんじょう)だ……なるほど。爪弾きにされるわけだ。占い師か」 静戒の名刺を両手で破きながら薄ら笑いを浮かべ男――本城洋一(――よういち)は言い、部屋を出て行った。 「ったく、魔除けになるって言ってるのによぉ」 言いながら静戒がパチンッと指を鳴らすと破り捨てられた名刺は元に戻り、浮かび上がると静戒の手の中に収まった。 「まぁ、いいけどな。さて、中、見せてもらうかな」 室内はまぁ、何処に出もあるような事務所だった。 入り口の壁には指名手配書が貼られ、そこを通った奥にスチール製の事務デスクが一対。 その前に来客時に使うであろう机にソファが置かれている。 デスクの上には電話にテレビ。机には灰皿。 壁沿いに置かれている棚には幾つものスクラップ帳にファイル。何らかの専門書が並べられていた。 几帳面と言うほどではないにしろ、キチンと片付けられている室内。 特別争ったような後もなく、資料棚の前に張られている遺体位置を表すビニールテープだけが違和感を放っている。 「さってと、」 ざっと室内を見回した静戒はソファに腰掛けると、名刺入れから先ほど本城に渡した物と同じ名刺を取り出した。一点違うのは裏書きに飛鳥古墳などで見られる四神が描かれていることだ。 それを机の中央に置くと、そっと指で北西東南北の順になぞる。 「四士、候宗(しし、こうそう)」 声にならない息だけでそう呟くと静戒は目を閉じた。 数分後、目を開けると、名刺を手に遺体があった場所まで進む。 その周囲を改めて見回す。 「コレ、だな……」 言って静戒が視線を送ったのは遺体のちょうど右手に当たる部分だった。 「何か持ってたってコトか……?」 勿論、現場保存はされているが、遺留品や痕跡の鑑定のために室内に置かれていた物はある程度応手されている。 本来ならばファイルなども被害者が弁護士という職業柄全てなくなっていてもいいはずなのだが……まぁ、もっとも既に中身は写し終えて現場を極力元の状他にしておきたいという捜査本部の方針かもしれない。 そう思うと、別段気にすることでもない。 今静戒が気になるのは被害者が右手に何を持っていたかだ。 「しゃーなしだな……新宿西署に顔を出すか」 言葉通り、本当に仕方がないと言った面持ちで静戒は名刺を名刺入れに戻すと部屋を後にした。 「あ、」 ビルを出たところで、バイクに跨り、自室の方も見ておけばよかったと思ったが、事件現場はそこだけとのことだし、何よりもこれから所轄に行くのだから情報はそっちで得られるだろう。 そう考え直し、エンジンをかけた。 警視庁新宿西署刑事課課長の本城は捜査本部となっている会議室で一人腕組みをして考えていた。 先ほど会った本庁の刑事。超常現象対策室………初戦は賑やかしの色もの部署だと思っていたが、殺人事件に関わってくるところを見ると、捜査一課に設置されたのが決して巫山戯てではない。そればかりか、事件発生から僅か三日のヤマを改めて捜査している。 迷宮入りした事件の再捜査を資料課や窓際部署の刑事が再捜査することはある。 もしくは数ヶ月経っても進展を見せないヤマについては見方を変えようと捜査員が変わることはある。 それが、僅か三日だぞ。 確かに、早期解決に越したことはない。しかし……そもそも、本庁からの応援など聞いていない。 あの静戒とか言う刑事が勝手にやっていることか。いや、ならばわざわざ大っぴらに動くことはない。 組織に逆らった警察官は下手な暴力団よりも後味の悪い辞めさせられ方をする。 曲がりなりにも本庁の刑事がそんなことを分かっていないはずがない。 ならば、本庁はこの事件に関して何らかの情報を隠しているのではないか……。 本城が捜査資料に改めて目を通していると扉を開く音が聞こえた。 「ども、本庁のものですけど」 脳天気な声を上げて入って来たのは先ほどの刑事、静戒龍だった。 「よぉ……っと、本城さん、でしたっけ?さっきは失礼しましたね。まさか、課長さんがいらしていたとは」 所轄の責任者かと確認しておきながら白々しい……。 そうは思ったが、何も余計な波風を立てることはない。 「いや、こちらこそ悪かった。それで、何をしに?」 「何をって、さっきも言ったじゃないですか。捜査資料を見せてもらいにね」 僅かずつながら本編は進んでいます。 では。 |
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さて、昨日の記事で言っていた小説のリメイク。
こっから始めてきたいと思ったりします では、ささやかな暇つぶしになればと……。 時は西暦2064年。 年号が戒安(かいあん)と変わってから十二年。
ようやく世の中も戒安元年に制定された法律に慣れてきてはいた。
その詳細は今回は差し控えるが、簡単に言ってしまえば国が心霊現象をはじめとする超自然現象を認めたということだ。
当然、呪殺しても殺人罪が適応され、それまでの脅迫などでは済まなくなっている。
そして、それらの捜査をするために設けられたのが心霊捜査官。
警視庁・警察庁両庁には勿論、宗教法人を管理する文部科学省。
寺や寺院などは歴史的価値があるためにそこの管理が任されている文化庁。
などなど……。
捜査官はかなりの人数いる。
しかし、その中でも、国が超自然的な力を認め、管理官とするのが国家霊能師。
実技・知識の国家試験があり、文字通り文武両道でなければならない。
それはつまり、所謂除霊などの際に危険が生じても自己責任であるということの裏付けでもある。
そして、ここ、警視庁にも数少ない国家霊能師の資格を持った男が。
が、しかし、慣れてきたといってもまだ十年ちょっと。当然その非科学的なものに反感を覚え、嫌っている人間もいるわけで……。
「――大村警部、また来ましたよ」
「来たって誰がだ?」
大村と呼ばれた男は中肉中背。歳は四十過ぎくらいだろうか。高そうなスーツの内ポケットからタバコを取り出しながら応えた。
「インチキ占い師ですよ」
声をかけてきた手塚は歳はまだ二十代だろう。短髪の髪に黒みがかった肌がスポーツマンらしさを演出している。
「ン?ああ、彼奴か……手塚、お前アレとは同期だろう。もう少し仲良くなれんのか?」
「無理ですね。そもそも、向こうは同期と言ってもエリート街道を上ってるヤツですし、俺は所詮刑事畑の二流以下ですから」
手塚はあからさまに嫌そうな顔つきで戸口に立っている男を睨むように見ながら応えた。
「オイオイ、それは俺への皮肉にも聞こえるぞ……いいから、相手をしてこい。俺はこっちの資料を片付けなきゃならんからな」
言うと、大村はタバコを咥えながら自分のデスクに戻りファイル状になっている捜査資料に目を通し始めた。
場所は警視庁刑事部捜査第一課強行犯係の室内だ。
何人かが事務用机に向かって資料を眺めたり、壁にある電子版の捜査状況を確認したりしている。
そんな中の窓際で話していた二人。
捜査一課強行犯係係長、大村 和義(おおむら かずよし)。同刑事、手塚 武(てづか たけし)だ。
「よぉ、手塚」
「何かご用でしょうか、静戒(せいかい)警部補殿」
嫌みたっぷりに上目遣いで応える手塚。
「そう邪険にするなよ」
話しながら入って来た男――静戒はそんな手塚の態度も慣れているだけか、はたまた諦めかは知らないが受け流すようにあしらうと大村の席に向かった。
男は静戒 龍(――りゅう)
元々は手塚同様に強行犯係の一員だったが、二年前の人事で異動になった。
現職配属は刑事部捜査一課超常現象対策室だ。
コレがつまり警視庁の超自然現象の捜査チーム。そして、静戒が先に挙げた国家霊能師の一人である。
静戒は元々入庁時からキャリアと呼ばれる第一種公務員試験を合格して入って来た。
本来ならば警視庁ではなく警察庁に入庁し、出世街道を歩きながらどこかの署長でも通過して警察庁の幹部候補と成っているはずなのだが、本人の意向により警視庁の地域課――つまりは交番勤務――から始め、一段ずつ階段を上ってきている。
しかし、元々キャリア組。一段ずつにしろ、その出世の階段を昇る早さは通常入庁した者よりも遙かに早い。
歳は二七歳。警部補の階級になるには、まぁ、普通に言ったら早過ぎるくらいだろう。
それが、キャリア故の出世だ。
もっとも、静戒の場合は大学生時代に既に国家霊能師の資格を取得していた。その功績もあってと言うのもあるかもしれない。
そして、その功績の賜が、二年前の異動――心霊捜査官となるきっかけと成ったのは言うまでもない。
「ご無沙汰しています。警部」
「そうだな。お前がこの部屋を出て行って以来だな。二年ぶりか……」
「そうですね。俺は何度か着ているんですけど警部はいつもいらっしゃらなくて」
「コレでも捜査で忙しいからな。お前と違って暇な部署じゃないんだよ……それで、静戒、今日は何のようだ?」
「そんなに迷惑そうにしないでくださいよ。俺だってホントは昼寝でもしてゆっくりしたいところなんですから」
ほとんど嫌みのような大村の言葉にも静戒は大したリアクションをせずにいる。
「それでも上から今強行犯で取り扱ってる事件が行き詰まってるから手伝ってやれって言われたら行かないわけにはいかないでしょ?取り敢えず、捜査資料、見せてくださいよ」
「悪いが、断る。お前も知っていると思うが、警察という組織は個々の縄張り争いが非常に激しい。いくら同じ捜一だと言っても、この部屋を出て行ったお前に資料は見せられん」
「そうですか?ならいいですけどね。俺も別にわざわざ自分から面倒ゴトに首突っ込む気はありませんから……けど、いいんですか、警部、俺は刑事部長に言われて来たんですけどねぇ……」
「部長がなんと言おうがこのヤマは俺達が捜査する。そもそも、事件が発生してからまだ三日だ。ドラマじゃあるまいし、そうそう簡単に解決できるか」
「ま、確かにそうですけどね……なら、日を改めますよ……では」
静戒はそう言うと捜査一課の部屋を出て行った。
「いやにあっさり退散しましたねぇ」
「コレでこっちは完全に悪者だな。刑事部長に呼び出される前に容疑者を挙げなければ面目がたたん」
「ええ、確かに……」
「さて、どうするかな」
一課を出た静戒は警視庁地下に向かっていた。
目的地は地下駐車場。
「取り敢えず、直に行っても無駄だったか。なら、もう一方だな……」
事件が起きた場所が警視庁の直接管轄内でないならその捜査本部は大抵の場合所轄署に置かれる。
静戒が言われた事件も当然その類で、発生場所などはニュースでも告知されているため、担当所轄署も判っていた。
「さて、行きますか」
フルフェイスのヘルメットをかぶると、誰に言うでもなく呟き、バイクに跨ると勢いよく発車した。
事件が発生してまだ三日。
当然、現場には立ち入り禁止の黄色いテープが張られ、その前には制服警官二名が立っていた。
静戒が向かったのは事件現場。
現場は新宿駅西口にある先主官(せんしゅかん)という雑居ビルだ。
「三日前ねぇ……三日で容疑者挙げて逮捕できりゃ苦労はねぇよな」
バイクを現場のすぐ横で停め降りながらつぶやく。
「ちょっとキミ、ダメだよこんな所にバイクを停めちゃあ。駐輪禁止とか以前にここは事件現場なんだから」
見張り役に立っている制服警官は静戒がバイクの鍵を抜いたのを見てそう言いながら近づいてきた。
「解ってるさ。だからここに置いたんだからな」
応えながらも歩みを進め、テープをくぐろうとする静戒。
「ちょっとキミ!」
もう一人の警官も静戒を制止しようと腕を取る。
「ああ、悪いな。忘れてた」
静戒は言うと上着の内ポケットから警察手帳を取り出し、中身を見せた。
「悪いな。本庁捜一の静戒だ。中、見せてもらうぜ」
「し、失礼しました!」
二人の警官は直立姿勢になると、敬礼をして強ばった顔を見せる。
「そう言うコトするなって。お前等所轄が俺達を嫌ってンのは知ってるからよぉ」
「そんな、滅相もありません!」
「いいからいいから。それより、所轄の責任者はどこにいるんだ?いるんだろ、現場に?」
「はい!すぐにお連れします」
「いや、いいわ。中にいるんだな?なら、勝手に見るかよぉ」
「はい!」
「一々めんどくせぇよなぁ……」
ビルの一番奥にあるエレベーターに向かって歩く静戒を警官二人は敬礼姿勢のまま見送った。
現場はビルの三階。
個人の弁護士事務所。自宅兼事務所として使っていたその部屋の主が被害者だ。
三日前の深夜、何者かによって殺されたらしい。
被害者の名前は遠藤 創(えんどう はじめ)三二歳。死因は頸動脈を斬られたコトが原因の出血死。
室内は、所謂密室状態で、内部から鍵がかかっていた。既に鑑識捜査も終わり、報道もされている事件なので、静戒にもその程度の情報は入っていたが、やはり警察のみが知っている情報は欲しい。
その為に管理補佐官をやっている大村を訪ねたのだが当てがはずれた。
「ま、別に大村さんには期待はしてなかったらいいけどな。どのみち、現場には行くつもりだったし」
エレベーターが三階まで上がるまでに静戒は鏡を見ながら呟いた。
取り敢えずはここまでです。 長さなどに対するコメントとかもいただけたら幸いです。 イラストとかキャラ画とか描いてくれる人いたら飛び跳ねて喜びます! では、また次回。 もしくは、明日の記事で。 |
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突然ですが、 あ、ちなみにタイトルは本記事のタイトルです。 |
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