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一章もそろそろ大詰め 新宿西署を出た静戒はバイクを飛ばして埼玉県に向かっていた。
目的地は遠藤の実家だ。
新聞と新宿西署で遠藤の葬儀予定を確認し、まだ火葬されていないことを願って速度を上げる。
司法解剖は終わり、縫い合わされた遺体は遺族が既に引き取った後だった。
霊安室に安置されていれば話が早かったのだが、今更仕方ない。
「……あと一時間か……」
首都高に入って蛇行しながらすり抜け、危険運転スレスレの走りをしながら静戒は呟いた。
火葬は午後四時だという。
新宿西署を出たのがおよそ三時半。
時間が夕方だけに必要以上に混んでいる。
「まぁ、最悪間に合わなかったらソレまでだが……」
――燃やしちまえばいいじゃねぇかよ
半ば諦めた静戒の言葉に、何者かがそう応えた。
「誰だ……」
一瞬ブレーキに手がかかったが、流石にこういった不可思議現象には慣れている。
減速することなく応える。が、
この忙しいときに……。
「燃やせって、何をだ?」
――何を?判ってるだろ。街をだよ。何もなくなったらせいせい走れる
「寝言はいらねぇよ。ってか、テメェ、誰だ?」
――さぁてな
その後、声は聞こえなくなった。
何だったんだ?
勿論、今度は応える者は誰もいない。
埼玉県春日部市栄町。
その一角に遠藤の実家があった。
忌中の札の掲げられた家屋に出入りする喪服姿の老若男女。
静戒が着いたときには既に火葬は終わり、遺灰の墓地への納骨も済んだ後だった。
「ッチ、やっぱ間に合わなかったか」
呟くと、ヘルメットを脱ぐ。
瞬間、それまでの濃紺のスーツが一瞬で黒い喪服に変わった。
「こういう時、この力は便利だよな」
静戒が行ったのは誰しもが必ず持っている霊感に働きかける作業。
人間に限らず、生きている者には何らかの霊的力がある。霊能師との差はそれが強いか弱いかだけだ。
つまり、どんなにその力が弱い相手にも認識できるほど強力な霊力を発すればそれは目に映ることになる。
解りやすい例を挙げるなら、視力の殆ど無い人にも模造紙いっぱいに一文字書けば読み取ることができるだろう。
誇大に物事を見せる。つまりはそう言うことを静戒はやっている。なので、実際に着ている服はそれまでと同じ濃紺のスーツだ。
「さてっと、」
呟きながら受付に行き、多少迷ったが、仕事関係の箇所に記帳し、香典を出した。
門を通り、中に入る。
「こりゃまた……」
相当な金持ちだなぁ。と、言う言葉を飲み込むと歩みを進める。
外側からは幾つかの家が密集しているように見えたそれが全て遠藤家の敷地だったのだ。
枯山水を魅せる庭。平屋ながら十以上も部屋があるであろう旧家。
元々この辺りを一様に仕切っていたらであろうことが伺えた。
「なるほど、これほどとなれば寺での葬式もしなくていいな」
「まったくですねぇ……」
静戒の言葉に応える者があったことに、一瞬たじろぐ。
「……っと、失礼。私、こういう者です」
言うと、言葉の主の男は名刺を差し出した。
“神取(かんどり)コーポレーション 取締役専務 埜田 克也(のだ かつや)”
名刺にはそう書かれていた。
「あ、済みません、あいにく名刺を切らしてしまって。私は静戒と言います。公務員です」
内ポケットから探す様子を見せながら静戒は言う。
「いえいえ、お気になさらず、遠藤先生は官庁にもお知り合いが多くいたことは存じております」
「そう、ですね……」
「では、私はこれで」
言うと、男――埜田は静戒に背を向け、遠藤邸を出て行った。
「何なんだ、アイツは?」
静戒が遠藤邸に着いた頃、捜査本部では動きがあった。
「警視、面白いことが解りました」
飛び込んでくるなりその刑事は言った。
「何だ?」
応えるのは本条だ。
「被害者、相当悪どく設けていたみたいですよ」
「ほぉ」
「紅永会(こうえいかい)と繋がりがありました」
「暴力団とか」
紅永会というのは東京では幾つもある暴力団組織の一つでしかないが、埼玉では有名なそこそこ大きな組織だ。
表だった仕事だけでも金融や各種風俗店は勿論、スーパーマーケットやファミリーレストランまで展開している。
もっとも、それらを経営しているは組織から派生した所謂舎弟企業で、暴力団の傘下だと知っている一般人の方が少ない。僅かに知っている人々もそこがあるからこその働き口や経済効果を一切合切無視して国に訴えるべきだと思っている人はいない。
その為に、表でも裏でも成長している組織なのである、
「しかしまぁ、あそこは法に触れるようなことは表だってやってはいないだろう。大人しい方だ」
本条も紅永会の動きは知っているのだろう。
「それがですねぇ、その表じゃない方で、被害者は関わっていまして」
「と、言うと?」
「紅永会の舎弟企業で神取コーポレーションと繋がりがあったようです」
「ほぉ。つまりはその企業はそれなりのことをやってるってことだな」
「はい」
焼香をしながら静戒は唇だけを動かして何かを唱えた。
本来合唱するであろう手の右人差し指と中指を絡めて。
「………」
遺族に会釈すると、遠藤邸を後にし、捜査本部に向かってバイクを飛ばした。
「神取、か……」
「ただいまっと、本城さんいますか?」
「……貴様、確か本店の静戒とか言ったな」
「そんな睨まないでくださいよ。せっかく面白いネタ掴んできたんですから」
言いながら電子版の前に立つ。
「って、アレ?ガイシャと紅永会の関係、掴んでたんですか?」
「所轄署をなめてるのか?」
「いえいえ、そんなまさか。しかし、葬儀にまでくるとは被害者はよほど紅永会の中に入り込んでたんですねぇ」
「葬儀まで?」
「ええ、さっき会いましたよ。取締役ってのに」
言うと、渡された名刺を取り出す静戒。
「お前、コレ……」
「はい?」
名刺を改めて目にする。
途端!
それは静戒の手の中で勢いよく着火し、数秒後には消し炭になった。
「この反応は、探知機、だな」
「………まさか………」
普段の静戒であれば、そんなものに気づかないはずはなかった。
それが、霊能関係であればなおさらだ。
勿論、言った本城にはそれがオカルトのソレだという確証はないだろう。しかし、再生したらデータが破壊される類の各種メモリーは幾つも見ている。
捜査本部で取り出した途端の炎上はまさしくその類を連想させる。
「霊能がどうのう言っても、所詮捜査員としては二流か……」
捨て台詞とともに、数人の捜査員を伴って部屋を後にする本城。
「俺が?こんな初歩的なミスを………?」
自問する静戒は自らのことが信じられない様で火傷を負った右手を見つめた。
さて、そろそろ戦闘パートを書きたくなってきたなぁ。 PR |
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今日は一日引きこもり。
何もせずに録り溜めたアニメを消化しています。 今日はこのまま何もせずに読書と動画鑑賞だな。 さぁて、明日は明日とて………あ、やることあった! |
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今凄い興奮してます!
美術館行ってきました。 ![]() 小谷元彦展 幽体の知覚 主催者や制作者の挨拶が終わっていざ展示場へ! ![]() (↑)内覧会のゲストシールです。 現代アートです。 なので非常に好き嫌いがハッキリすると思います。 いやぁ、実際の展覧会の前日。 色々な人が来てますねぇ。 美術専攻の大学生、その講師、銀行の管理職、日本舞踊の先生、美術品のブローカー、収集家、etc 開会式前までの話を小耳に挟んだだけでも他にも色々な肩書きの方が。 モチロン、ボクみたいな物見遊山なのも。 スゴイ楽しかった。 多少グロテスクな表現もあるので苦手な人は苦手でしょうね。 実際、貰ったパンフレットを見たウチの母君の感想は“気持ち悪い”でしたし。 普通個展なんかは時系列順に並べたりってのが多い気がするンですが、作者の今の感性で並べてあるってことで。 製作年代なんかは分かりませんがそのならびも秀作で。 開会式で学芸員の方が言ってた通り、空間をデザインしてある感じです。 一言で感想を語るなら「映画を1本見た感じ」 あ、地元朝日テレビのカメラが入ってました。 40日以上開催していますので興味がある方はぜひ! ってか、芸術や美術を少しでも仕事や学業に関わっている人は良くも悪くも刺激になるはずです。 |
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さて、Pixivにも投稿しましたが、静戒龍の続編です。
いやぁ、我ながらいいペースで書いてるんじゃないかなぁ。 「捜査資料を見せてもらいにね」 「好きにすればいいと、俺も言ったな」 「ええ。ですから、勝手に見せてもらいに来ましたよ」 言うと、静戒は手近な机にあったファイルとホッチキスで留められた冊子を手に取った。 本城の手にある物と御同じセットだ。 「一応だけ聞くが、説明は必要か?」 「いえ、結構。コレでも刑事ですから。資料の見方くらいは分かりますよ」 言いながらページをめくる。 「見終わったら声をかけてくれ。俺は鑑識にいる」 「はいはい」 部屋を出て行く本城を見送る。 「………」 目を走らせながらページをめくる。その速さはただただページをめくってくるとしか思えないほど速い。 「………」 十数ページ読み進めたところでページをめくっていた右手が止まった。その手は口を覆うように顎に当てられる。 なんだコレは……? 静戒の視線の先にあるのは現場写真。その中でも遺体写真のページだ。 「水晶……?」 先ほどの現場で静戒が気にしていた右手。 そこには綺麗に球体にカットされた水晶が握られていた。 いや、正確には握られていただろうと言うべきか。右手は半開きになり、その中からこぼれ落ちる形ですぐ横に水晶がある。そう言う写真だ。 現場保存は初歩の初歩。誰かが手から放させたとは考えにくい。仮に犯人ならば、そこまでして置いておいていくはずがない。 「コレは、実物を見ねぇわけにはいかねぇな」 資料を閉じると、静戒は薄笑いを浮かべて捜査本部を出た。向かうのは鑑識課。 静戒の目に映ったのは、水晶だけではなかった。 彼の眼にはその水晶にうっすらと赤い光が入り込んでいるのが確認できた。 写真に写り混んだり、ましてや水晶に反射した光ではない。水晶の中身が光って見えたのだ。 もっとも、中にそう言った加工をすればそう言う物ができあがるが、それはその資料を幾度も見たであろう捜査員達の目には映っていなかったであろう。 つまり、一部の物だけが読み取れる……心霊写真の一種。そう考えてもらえれば分かるだろう。 写真に仮に人の顔が映り混んだとして、それが何らかの霊症である場合、普通の人のは顔しか捉えることができないが、専門の人間が見れば、それ以外にも見える物がある。 オカルト番組などで単なる顔だけの心霊写真から恨みの念だの守護霊だのと見分けられるのは見る人が見ればソレだけが映っているわけではないと分かるからだ。 それはつまり、一見何もない写真であっても、実は心霊写真の類と言うこともあり得ると言うことだ。 今回の写真がそうだったのであろう。 そして、静戒はその水晶の現物に何らかの力を感じた。 遠藤氏を殺した犯人の痕跡を。 「本城さん、資料ありがとうございます」 鑑識課の保管庫に入ると、静戒は本城を探して声をかけた。 「おや、もういいのか?てっきり時間がかかると思ったのだがな」 「いえいえ、必要な物は見せていただきましたので。で、今度は各証拠品の実物を見たくてこちらに来たんですけどね」 「なるほど。此処は他の事件の物もある。今回のヤマのは今そっちのテーブルに出してある分だ。俺も今見ていてな。一通り確認し終えたところだ」 「そうですか……」 言って静戒は広げられた証拠物を端から見ていった。 二つ目の机に取りかかった矢先、ソレはさらなる輝きを帯びて静戒の瞳に映った。 「本城さん、コイツ、借りてってもいいですかねぇ?」 机の上に置かれビニール袋に入った野球のボールほどの大きさの水晶玉を指さし聞いた。 「証拠物の持ち出しは禁止されている。本店ではそんなことも教えられないのか?」 小馬鹿にした口調で言う。 「まさか。でも、許可があればいいでしょ?刑事部長に今から許可を取ります。だから、あなたにも一応承認して欲しいンですけどねぇ……」 刑事部長という言葉の時に一瞬本城のこめかみが動いた。 「好きにしろ。だが、そんな水晶玉、どうするつもりだ?」 「どうって、コレが凶器なんですよ」 持ち上げると、ソレを差し出すような形をして静戒は言った。 「訳の分からないことは言わないでもらおうか」 「何が変わらないと?」 「遠藤は首を、頸動脈を一太刀で斬られている。凶器はまだ見つかっていないが、相当な切れ味を持った刃物だ。科捜研や監察医の話では間違いなく鋭利な刃物だと聞いている」 「それで?」 「………ソレは鈍器にはなるだろうが、切り傷を作れるわけがない。仮に割られていた物ならば話は別だが」 苛立った口調で本条は言う。 「そうは言ってもねぇ、コイツが一番死のにおいが強い。それに禍々しい紅い気で満ちている。間違いなく人を殺めた後の霊症だ」 「レイショウ?」 「あんたには詳しく説明してやる義理はねぇ。もっとも、説明したところで納得できるとも思えねぇがな」 「ソレが、オカルト好きの占い師の見解か?」 「占い師ねぇ……」 警視庁内外で超常現象対策室のコトをそう言っているのは知っている、現に捜査一課の中でもさんざんそう小馬鹿にされている。 決して気分のいい物ではない。 しかしながら、自分にない力を持った物を恐れ忌み嫌い侮蔑するのはいつの世でも在ること。 ソレが時には魔法であり、時には科学であり、そして霊力である。 魔女裁判なんかが一番いい例だ。 「ま、あんたがどう思ってもいいさ。トニカク、コイツは凶器なんだ。借りてきますよ」 言うと、水晶をポケットに突っ込み、新宿西署を後にした。 その後ろ姿を苦虫を噛み潰したような顔で本条が見ていたのは言うまでもない。 取り敢えず、此処まで。 あ、ちなみに、近々一章は終わります。 |
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